|
◆人間関係を深化させる泡盛
(株)コンピュータ沖縄 名護宏雄
学生時代の4年間は東北の秋田の男子寮で過ごした。歓迎会では先輩からの献杯を断れず、飲みすぎで3か酔いを経験した。その時点で酒を止めておけば数々の失敗もせず、家一軒は買える金も溜まっていたはずが、懲りずに35年余りをお供してしまった。
飲みすぎで終電車を乗り過ごし、タクシー代もなく駅で寝て始発で帰った苦い思い出がある。川崎で就職して暫く経った頃、幼友達に「新宿に沖縄料理の店を見 つけたから飲みに行こう」と誘われた。今のように居酒屋がない時代、懐かしさもあってかなり盛り上がった。調子よく飲んでいる間に時計は12時を過ぎあわ てて駅に走って別れの握手をして電車に飛び乗ったが、酔いと終電車に間に合った安心感ですぐに寝入ってしまった。うたた寝の後目が覚めたのは終着手前で乗 換駅から遥か遠くまで来ていた。若気の至りで起こした失敗なのに、いつも泡盛の度数の強さのせいにして来た。
中学時代の同級生モアイが30年続いている。月見会を兼ねて拙宅で開いた折、秘蔵の古酒甕を味見したいとの希望があり、一斗甕から酒器に分け一杯ずつ振 舞った。古酒の美味さに目覚めた非常識な同輩たちは酔いに任せそのまま飲み続け甕の半分を飲み干してしまった。以来古酒の風味を堪能できない輩の前では、 初めから酒器に分けて出すか普通の泡盛を出すようにし、寝かせた年数の自慢話は慎んでいる。
最近は本土からのお客さんも、沖縄ブームで通が多くなり喜んでもらえる場所を探すのに苦労する。評判のお店も地 元の我々よりも観光情報の方が早く、仕事で来る方でもかなり詳しい。場所探しが面倒なので自宅での接待を心がけている。コンクリート造りのごく普通の家屋 でも部屋の配置や仏壇が新鮮で異国情緒を感じてもらえる。ゴーヤーなど沖縄料理も評判だが泡盛も好評だ。「家宝の酒です」とおもむろに甕から酒器に分け て、沖縄の伝統や仕次ぎの話をしながら振舞う古酒の体験は厳かな雰囲気があると受けている。限られた予算とささやかな心遣いで出来る大きなおもてなし、わ が琉球の先祖に感謝したい。
おいしい泡盛の製造工程を生み出し、さらにクース造りと「仕次」の技法はビジネス特許にも値する。島国で貧しい沖縄が産んだ世界に誇れる泡盛は人間関係も深化させる。
掲載:泡盛研究 第1号(創刊号)2006年12月 泡盛学会
|
|