日本生産性本部 生産性運動の専門誌
生産性新聞 2011年10月5日 掲載
クラウド・コンピューティングの急速な普及やスマートフォンの躍進に代表されるように、IT業界のトレンドが大きく変化する中、いち早く時代の変化を先読みし、目下、スマートフォンと関連したモバイル関連の提案にも注力するコンピュータ沖縄。「スマートフォンからも経費精算や日報作成などができる営業支援システムを開発していますが、既に当社の営業社員は、一年近く前から当該システムを利用し、効果が上がっています。この実績をアピールし、顧客への導入を後押ししたいと考えています」(名護氏)。
先手を打つことで得られるのは、市場における先行優位性だけではない。名護氏は人材育成の時間を確保することの重要性を指摘する。
「新しい時代の変化にどう対応していくか。我々の生き残りをかけて問われていますが、方向性を理解し、現実のものとして実際に行動に移せるか否かは現場の社員たちにかかっています。一方で、各人が過去の成功体験を捨て、新たな時代に合った新しい技術ややり方を取り入れるためには、2、3年時間はかかるでしょう。臨機応変に頭を切り替え、時代の変化の波に乗れるような人材を育成するためには、新たに必要となる試験や資格等を率先して取得させ、内部改革を強力に推進していかなければいけません」とこれまで以上に人材育成が大切だと語気を強める。
さらに、東日本大震災後、企業データ・システムの分散保存サービスに関心が高まっていることを踏まえ、12年4月から本格的にデータセンター事業に参入するための準備を進めるが、あくまでも同社がこだわるのは中小零細企業が対象だということだ。
「沖縄の企業の99%は中小零細企業です。ですから、そういった規模の企業でも利用できる価格設定にしたい。堅牢な施設を構えるデータセンター専業とは異なり、免震構造や補助電源などは備えられませんが、あくまでも災害時の事業継続に向けたデータ分散という趣旨で利用してもらえるモデルを検討中です」。
そこで、まずは県内の中小零細企業を対象にサービスを開始し、モデルが確立した後、県外のIT企業との連携も視野に入れていきたいと抱負を語る。「日本全国にネットワークインフラは整備されていますので、相互のデータセンターを仮想化でつなげば、データのバックアップも問題ありません」。
決して派手な取り組みではない。地道に数を積み上げ、輪を広げていくしかないが、中小零細企業同士が相互にカバーし合う方策として、安く・広くのモデルがあってもよいのではないか、と語る名護氏の新たな挑戦がこれから始まろうとしている。