2005年12月26日
昨年は、ソフトバンクや楽天等ネット企業の球団経営やマスコミ株買収劇が、報道とインターネット通信で大きな話題となった。台頭するネット企業の社会的な影響力も大きくなり、メデイアと通信を融合するビジネスモデルがより一層注目される様になった。
2000年に首相自ら先頭を切って動き出した「IT基本法」の制定は大いに期待した。世界規模で生じているIT革命に的確に対応し、インターネッ ト等を通じて「IT革命の恩恵が享受出来る」と思うと胸が高鳴った思いがある。業界でも各方面で議論が沸騰したが、概ね好意的な意見や歓迎のメッセージが 多かった。ITバブル崩壊の後遺症や長期不況からの脱却を期待したい気持ちが巷に溢れていた。 県でも「マルチメデイアアイランド構想」が策定され世論も盛り上がり、職場や業界団体も巻き込んだ熱い議論が交わされた。高速・大容量通信で、低コストを 実現し積極的に情報関連産業の集積、振興を図るという、インフラ整備を中心とした構想ではあったが、夢を抱かせる雰囲気で肯定的に受けとめた。 私が参加した01年の県産業教育審議会の専門委員会でも、国や県の出来たてのIT関連資料が提供され、県民1人1人の情報リテラシーの向上や学校教育の充実により、情報化・国際化に対応した人材を育成し、幅広い人材層を形成していく課題が議論された。 沖縄の市場は「一気に普及するが飽和に達するのも早い」、市場規模が狭いのでマスコミや口コミでの広がりで、新しい 業種でも2,3年すればりブームになり活況を呈する。県内企業のパソコン活用の取り組みや、業務への応用は全国的にも早い取り組みであった。中小・零細の 企業は経済力も弱い上に、経営ノウハウも浅く、高価なオフコン購入は無理があり手頃なパソコン導入への転換が早かったと思われる。
今日ではネットワーク環境も整い、パソコンやプリンターで仕事をこなす企業も増えて来た。わが社でも、ブロードバンドや携帯電話の普及、IT技術の機能強 化もあって日常業務の形態も大分変わった。ネットワークシステム活用の結果、7名だった事務職が育児休業を経験したベテラン3名で対応でき、在宅勤務も可 能になっている。「沖縄の隅々にパソコンの花を咲かせたい」を経営理念に掲げて25年目を迎えることができ、感謝である。 弱小で僻地と言われた沖縄本島やその離島が、地域特性や特産物、文化や産業を生かせば癒しの場、少子高齢化社会の成功モデルと言われる。ITコストも下が り、電子商取引で販売規模を広げたベンチャー企業も増えているが、地域間・企業間競争は激しく自社システムの更新と自分自身のアップデートに油断は禁物で ある。 IT化の波に乗り遅れがちといわれる中小・零細企業でも1人1台の時代を迎え、画面を前にした職場風景が定着してきている。ハード・ソフトのモデルチェン ジの短期化やコンテンツ技術進化への対応で経済的負担も大きいがIT経営を避けては生き残れない。大事なのは、業界のIT導入の流れに乗り遅れないで、将 来性を正確に予測し対応していく、すなわち業界予測に基づいた「ITに対する先見力」を身につけることが大切である。 昨年後半におきた東京証券取引所の株誤発注による4百億円の被害や建築構造の強度偽装問題、どちらの事件もIT技術によるシステム構築とその運用上の人間性が問われる問題であり、地域と関わりのない儲け主義の企業経営者の行き着く姿を見た思いがする。
自分の会社が5年後、10年後も元気でいる為にも、経営者自らが経営環境を変え、地域社会からの信頼や期待に高い水準で応えられる企業作りを心がけたい。
掲載:月刊誌「経営」2006年新月号 第40巻 社団法人 沖縄県経営者協会 |