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建築業界と、我がIT業界の違い
今年の初夏に、屋敷裏の古い家畜小屋を改造した。親父が元気な頃、サトウキビの出荷終了時に、手伝ってくれた親戚や兄弟を集めて感謝の宴会を開いた。そのとき、丸々太ったヤギや鶏を潰して大盤振る舞いした、思い出の小屋である。
30年余が経過し、暴風にはトタンが飛びそうなくらいボロボロになり、撤去を考えていたが、床やひさし、窓のアルミを入れ替えたら結構な空間に変わった。軽い気持ちで頼んだ改造だったが、見違えるほどの出来栄えにびっくりである。
自宅にあった古本やパソコンなど小間物を持ち込んだら、快適で落ち着いた雰囲気の部屋になった。帰宅してビール片手に、昔の写真や書類の整理をしていると、大学時代の資料や海外旅行時のスケジュール表が出てきて、ついつい深夜になることもある。
不景気で仕事がないという日当1万円で頼んだ大工は、図面もなく行き当たりばったりの仕事で、肝心要の抜けや不行き届きもある。特に日中は大変だ。天井の高さが2メートル程度しかなく暑い、断熱材も入れ、工夫改善したが厳しい。かといってクーラーを入れるほど利用するわけでもなく、贅沢は許されない。
使うたびに「ブロック高は?」の言葉を思い出し、もう一段上げて積んでおけばとの後悔にさいなまれている。完璧でリラックスして過ごしたい我が家、ちょっとした欠陥や気になる不便さがあると、徐々に不満が鬱積してくる。
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建築業界と、我がIT業界は、似通ったところがある。クライアントから仕事の相談が有り、それを設計し図面通り作り上げ、成果品を引き渡す。コンピュータのシステム開発も同様な手順を踏む。行政の許認可や諸手続き、建築設計事務所から建築業者への分業体制等はないが、仕事の流れは似ている。
IT業界では、打ち合わせや引渡しまで設計書と仕様書の作成ですむ。法的に決まった基準はなく、社内基準か個人的経験で作成され、客観的なオーソライズされた仕様は決められていない。社内のシステムエンジニア(SE)とプログラマーによってシステムが開発され納品となる。
作業は個々人の判断に任されるので、流れを把握してそれをプログラムで表現し、求められる仕様を満たすには、論理より試行錯誤の繰り返しが多くなる。機能が足りない、複雑で処理速度が遅い等でトラブルに発展することもある。
簡単な増改築でも、事前準備と細部の打ち合わせは手抜きできないのと同様に、職場で長時間付き合うコンピュータシステム、使い勝手や処理速度は担当者の日常業務に大きな負担になる。SEは効率的で行き届いたシステム作りが求められる。
システムが稼動したときの喜び、物づくりの快感は建築業界と同様だが、我がIT業界も標準化や分業化が進展し、効率的な作業手順の確立が急がれる。そうなれば、行き違いによるトラブルも減少し、双方にメリットが出て顧客満足度も上がるのだが・・・。